「住まいの終活」・・・と言う企画をしています。
相続して使えなくなった住宅の活用法・リノベーション・買取・・・不動産や建築にまつわるお仕事は無限にあります。
そんな中で、先日あるお客様からの紹介で地方のご老人にお会いすることがありました。お聞きした年齢よりも大部お若く見えましたが、かなりのご高齢です。
近県に住む息子さんが同行してお車で問題の中古住宅の前でお会いしました。
自己紹介から、今後の活用方法などのご相談に乗っていましたが、この住宅は亡きお兄様の所有とのこと。
子供さんたちも古い住宅なので相続はしない。とすでに放棄されたとのこと。
最後に残った妹さんが この利用価値を判断の上相続するかどうか決めるとのことでした。
息子さんも同席していましたが、会話にはほとんど参加せず、本当に運転手で同行した感じでした。
色々ご相談の上、結局私の会社が買い取るという事で決着が付き 週明けの法務局の謄本を取り寄せ次第金額を決定することで別れました。
お兄さんが亡くなって一年も放置していた家は荒れ果てて、雨漏りでキッチンの床は腐り始めていました。残ったゴミもかなりの量で苦戦することは想像に余りありましたが、手造りの離れがあって「面白い!」とおもったのです。
結局結構甘い値を付けて このご婦人は小躍りして喜んでいる姿が、電話越しに伝わりました。
当日買付証明と 手付金半額を契約当日入金する旨の郵便を送りました。
・・・ 3日後にそのご婦人からの着信がありました。・・・
しかし、契約の日程の連絡かと思いきや何か歯切れの悪い要領の得ない「ムニャムニャ」と話しています。
どうも根ほり葉ほり聞き出した結果は このご老人すでに相続放棄の手続きが終了していて、お兄さんの滞納している税金の支払い免除を受けて居ながらこの住宅を売り払うつもりだったようです。
放棄をしていれば税金の支払いを免れる事はご存知だったのか、それとも遠方にての手続きなので関東ではわからないと思ったのか。私の契約時の必要書類の手紙を見て恐らく隠し通す事は出来ないと踏んだのか・・・。
いまだにわかりませんが、何か割り切れないモヤモヤが残りました。
特に被害はありませんでしたが、何か狐につままれたようないや~な気分です。
詐欺と言うと思い出す極めつけの事件が今から18年程前にありました。
賢明な皆さんはこんな詐欺にはのこのこ出て行かないと思いますが・・・。
私はノコノコ出て行ったのです。
ある日オープンしたての私の会社に サラリーマン風の男性が入ってきました。
この人は「青山」と名乗り こんなことを話し始めました。
「私は、東北の仙台のある財閥の社長の秘書をしています。」
要約すると、この社長さんの東京の愛人が私の隣接する国際都市に住宅を建てたい。
ついては全権を任せられているこの秘書が、社長の家族に分からない様に内密で動いている。いつも通る私の会社を見ながら、この会社で土地を探し家を建てたい・・・。と
今思えば、財閥の愛人なら、もっとど派手なハウスメーカーで御殿を建てたいところなのに・・・。
なんとなく違和感を持ちながら、話を聞くだけ聞いてその日はお別れしました。
何日かしたある日、この青山から電話があり仙台の社長さんが土地を見に(確か2~3日後だったと思いますが、)出てくるので是非あなたに会いたいとおっしゃっている。
隣町の駅前のホテルに滞在しているので会いに来てやってほしいと・・・。
何故か朝8時と指定されておバカな私は 朝早くに起きて準備して7時半ごろに駅前に到着しました。
駅のロータリーで時間を調整していると駅の階段を下りてくる青山を見つけました。
大きなあくびをしながら降りてきます。
あ~。秘書さんてたいへんなんだな~。と思いましたが、今にして思うとその姿は財閥の秘書・・・と言うより競馬場に向かう遊び人・・・と言う感じでしたね。
時間通りに到着した私は、青山に案内されて何階かの個室に行きました。
そこにはとても品のある、ロマンスグレーの紳士が座ってにこやかに私を迎えてくれました。
この時点で私は完敗。 98%信じてしまいました。残りの2%は、彼が流暢な仙台弁を話したときに満了です。
なぜなら、私は仙台人だからです。
どんなお家が欲しいのだろう。 土地はどの辺に求めているのか。 私の頭は仕事でフル回転しています。
そんな時この財閥は「 彼女が今こちらに向かっている。少し時間がかかりそうですが、あなたは待つことができますか?」
私「全然大丈夫です!」
かくして私は詐欺師の仕掛けた罠に足を踏み入れました。
間もなくして部屋に一本の電話が入ります。
向島の料亭の女将がフロントに来ているので私に同席させて良いか?とのことでした。
別に私には何の支障もないので了解すると、間もなく年の頃なら70歳前後の女将さんが登場しました。
「社長さん! 昨夜は独り勝ちして・・・・。お金の清算にきたわよ~」と言って200万円の束を渡しています。
そうか・・・。昨夜この社長さんは向島でかけ事をして独り勝ちしたんだ~」
バサッと置かれた200万円をボ~っと見ながら、未知の話に耳がダンボになっています。
「そうか。 そんな金、今夜又繰り出してみんなでどんちゃん騒ぎすればなくなるよ。」
財閥はそう言いながら手元のアタッシュケースに手を伸ばし蓋を開けました。
なんとそこにはビッシリ詰め込まれた100万円の束がありました。
青山はここに3000万円あると言っています。何か妙な展開に私は少し後ずさりしました。
財閥は女将と青山を巻き込んで、新聞紙を広げ、この上で「お座敷競馬」と言うのを始めます。 多分この展開に私は間抜けずらをして口は半開きだったとおもいます。
目の前で100万円の束が行ったり来たりしています。そのたびに財閥はアタッシュケースを開けて今来た100万円を出したり入れたりしています。
しばらくして、 又部屋の電話がなります。
財閥、 スナックのお姉ちゃんが会いに来ていると言うのでのでフロント迄下りていきます。
そこで女将と青山。 財閥の悪口を言い始めました。
あんな我儘と付き合うのはもう我慢がならない!・・・と
そこで私に向かって「 社長さん この3000万円を私達で取り上げましょうよ。
簡単よ! これいかさまなんだから!!!」「ほらこうして親になったらこんな風にしてこうして・・・」ムニャムニャ。
私のどんくさい頭では理解不能・・・と言うか 理屈にあっていないのです。
そのからくりだと、親の時には巻き上げることが出来ても、子の時には巻き上げられるのです。
昔から、賭け事は全く縁のない私は ましてやこの仕事の大勝負の場所で賭け事をするなんて考えられず・・・絶対拒否をしました。
ひとしきり財閥の悪口が終わったところで財閥が帰ってきます。
「いや~ごめんごめん。 全くしつこくて困るよ。」
そういって又お座敷競馬が始まります。そうこうしていると又フロントからの取次電話。フムフムと財閥が話し終えると今度は 財閥は私に向かって「いや~悪いね。彼女から電話で、お母さんが急に倒れて今救急車の中らしいんだ。 病院に送り届けてから行くから、少し遅れるけど待っててって言っているよ」
私は一抹の不安・・・え~こんな時に住宅の話なんてしていいの? それどころじゃないのに・・・。
それにホテルの一室はなんか賭博場になっています。
私は部屋の隅で、いつ来るかわからない彼女を待っています。????
財閥 「 社長さんも待っている時間に 一緒にやらないか?
ここでこのお金持って帰りなさいよ。 今夜向島にご招待だ。」「10円持っていない?10円でいいよ」
10円は持っているし、元々アルコール依存症のきらいがあり、宴会のご招待には弱いのですが、この時は何故か何度もお断りしています。
だんだんしつこさに腹が立って 私の顔は険しくなってきます。
もうここでゴングです。
このあたりで 又電話。
彼女のお母さんが亡くなって今日は来れないと。
は~~~~~。
彼女が落ち着いたら又青山が電話をくれるとの事で、何か狐につままれた様に会社に戻りました。
今日あった事は何だろう。 夢だったのか。 幻か?
住宅建設の話はどうなったのか・・・・。
そこから毎日青山の電話を待ちました。
1週間ほどで、この電話は使われていません。 のアナウンス。
ここ迄来て やっと私は決定的に詐欺未遂にあった事に気が付きます。
朝の八時に集合掛けられたのは、午前中のカモと午後からのカモがあったからです。
本当に勘が悪くてどんくさい自分に嫌気がさします。
多分何度でも騙されます。