はた目には パワハラと大勢の人が認識している・・・・
しかし、本人はそれを苦痛に感じない・・・。
洗脳することが出来る人は一種の天才です。
そして洗脳される人がいます。
現場には大勢の職人さんが出たり入ったりします。
私は過去に こんな職人さんを使っていました。
現場のメインになる大工さんです。
そして今回の主役はこの大工さんの弟子・・・と言うか年齢は親方と同じですが、まあ弟子と言う括りになると思います。名前はなかちゃんと言いました。
このコンビ・・・。
昭和の名残りの親方と弟子。
なかちゃんは親方をとても尊敬しています。
しかし、それは誤解だとみ~んな知っていました。
なぜなら、親方は常になかちゃんを怒号と罵倒で支配していたからです。
初めて現場で出会った他の職人さんが委縮してよけて通るほど常に怒号が飛び交います。
なんでもなかちゃんは元暴走族だったとまことしやかに語られていましたが、穏やかなどこにでもいる温厚な大工さんです。
なぜこの親方にいつも罵倒されて働いているのかわかりませんが、過去に親方に聞いたところ、なかちゃんは経済的にとても困って居るところ 親方に世話になったとのこと。
毎日夕方にその日の賃金を貰って帰り、自宅には奥さん、引きこもりの娘さんがそのお金を待っているとか。
あるリフォーム現場では、施主さんが驚き二階に避難して下りて来なかったとの逸話もありました。
ある日私は 親方の居ないときになかちゃんに「なかちゃん、いつもご苦労様!。 親方の機嫌が悪い時は大変だね」
と話しかけました。
個人的な会話は余り望まないなかちゃんは「いや~・・・。私がダメな人間ですから、親方には苦労ばかりさせてしまって・・・」と言いました。
私は絶句してしまいました。
この人は自分の言葉を持たないのです。
その日も階段の取付が悪いと「何年大工やってんだ! バカ野郎!!!」と怒鳴られているのを遠目にみていたからです。
私は、ふと考え込んでしまいました。
常に怒鳴られてそれが日常化してしまうと、10の中の1割、優しい言葉を掛けられると人間は 何か不思議なホルモンが分泌されてしまうのか・・・。
次にはもっと褒めて貰うために頑張ろうと思うのか・・・。
叱られるのは自分が悪いからだ・・・と思うのか。
勿論 この親方 元請の私や施主さんには昭和のレトロな職人感満載でかなりの高得点でしたがやはり洗脳する人間の恐ろしさを持っていました。
縁が途切れて 何年も前にこの職人さんを現場に入れることはなくなりましたが、なかちゃんも私も 親方も同じ年の生まれ・・・・。
もう 無理は出来ない年齢です。
他社の現場で一緒だった職人さんに聞いたら、なかちゃんはもうヨレヨレでかなりの無理をしているようでしたが、相変わらず親方に怒鳴られているようです。
人間の脳みそって厄介です。
9個怒鳴られ支配され 1割の優しい言葉で親方を愛し尊敬し、これを苦痛と感じていないのです。
又親方もこうして育って来たのでしょう。
昭和なレトロな職人の物語は 令和の御代ではどんな変化をして行くのでしょう。
もう辛抱とか 我慢とか死語になっていますが なかちゃんの感じている幸福感は間違っているかも知れませんが きっとそれがなかちゃんの幸せなのでしょう。
洗脳・・・・・
宗教もしかり。
一度占領された自分の脳みそは もう誰にもどうすることも出来ないのです。