designershome’s blog ~デザイナーズホーム~

専業主婦から不動産・建築の会社を起業したおばさんの話

飛び込み営業に泣いた日

令和4年2月27日 日曜日

 

刻一刻と送られているウクライナのニュースに釘付けです。

悲しみで胸が痛みます。

昭和28年 この世に生まれ平成 令和と平和な時代に生きてきました。

物のない時代でしたが、戦争を知らない幸せな時代の子でした。

 

いつの頃でしょうか。

私たちの作ったこの国は 、何でも手に入るようになった代わりに大切なものを一つ一つ手放して生きてきたような気がします。

戦後生まれの団塊の世代の 少し後にうまれました。

巷には安保反対の 言わば内乱の時代でしたが、 当時中学生であった私の世代はそれさえも遠い 海の向こうの出来事のよう。

 

背伸びをし・・手を伸ばせば・・何でも手に入ると勘違いをして生きてきました。

背伸びをすれば何処かにひずみが生まれます。

身の丈を知らない生き方の行きつく先・・・。

あての無い旅のようでした。

 

奈落の底で、もう一年頑張って再試験を受けようと決心するまでの私の顔はもうゾンビの様だったに違いなく。

泣いたりわめいたりしたに違いありません。

1次試験の合格は有効で 翌年は免除になりますが、これに失敗するともう後はありません。

犠牲にしたこの年月をどうするんだ!

膨大な時間と お金を浪費した上にもう二度とこんな事はやりたくないと 半ば捨て鉢になって、製図道具やテキストは目につかない所に隠してしまいました。

 

そんな時にも 兎に角働らかねば・・・。、落ちてしまったと言えども生活や学費ローンは待ったなしに追いかけてきます。

何とか見つけた働き口。 一度は捨てた不動産業界が拾ってくれました。

これが不動産デビューになるのかどうかわかりませんが??? 。女性だけの職場でした。

大勢のおばちゃんたちが嬉々として働いている様は 私には少し奇異に感じましたが・・・。

 

社長さんだけが男性です。 朝礼の時から檄が入り前日の成果を一人一人叱られたり、褒められたりしていました。

課長さん・部長さん・専務さん・店長さん。みんな売り上げに沿って出世できるような仕組みです。

しばらくして、係長さんと言う(この方は優しかったです。)少し年下の女性から、

「ねえ・・・。ここで生きていくつもりなら、髪の毛切ったほうがいいよ。

じきに社長さんから叱られるよ」  と耳打ちされました。

前日の朝礼で  私の口紅の色を注意されたばかりだったので、あ~そんなこともあるのか。」と。

ここしか生きられないと思った私には選択肢はありませんでした。この社長さんは当時大ブームだった安室ちゃんに似ているものは徹底的に排除していたと思います。

何千万の商取引をする者の似つかわしい姿・・・。そうなんですね~。

次の休日に、長年大切にしていた長い髪をショートヘアーにしてきました。

一貫していまだにショートヘア-を守っています。

 

上司に「ご苦労様です」・・と言ったら「お疲れ様です」と言い直され、後ろ姿が寂しいと叱られ。

兎に角何でも叱られました。

基本 私は社会人としての常識が欠落していたかもしれません。

当時は理不尽と感じていましたが、ただの世間知らずだったのだと思います。

 

仕事の内容は 毎日のポステイングからはじまります。

広い街の中のどの地域に どれだけの量のポスト投函が出来るか。

午前中はポスティング・午後からは昨日ポスティング出来た所を一軒ずつ回ります。

 

知らない町の知らないお宅のチャイムを鳴らすことは、いまだに苦手です。

その時は一日200枚の目標だったと記憶しています。

 

ピンポ~ん!

「なんだ!」

「昨日のポストに入れたチラシはお読みいただけましたか!

「お前か!あんなチラシを入れるのは!」

「お前は、俺に家を売れと言うのか!  ふざけんな~!」

 

まあ専任で売りのお客様を探す仕事です。

空家があれば持ち主を探し出し売らせていただけるよう何度も行きます。

何度断られても上司は又行けと言う。 

家の前まで行くと足がすくみ、チャイムを押す手が震える。

 

車の中で昼食を取りながら、住宅街の干されたふわふわの布団を眺めています。

朝から私を待ち続ける母から。。。「まだ帰れないの~」と帰るコールが来る頃には

知らない町の夕暮れ。さんまの焼ける匂いがしてきます。

 

 

5万円の廃車寸前のボロ車は、それでも良く動いてくれました。

まあ人生ドン底だな~・・・。と思った底の底ですね~。

後に会社を興した訳ですが、 まあ長くは勤められなかったこの会社の経験は生きて財産になりました。

仕事は自分で興して作るものだという基本を教えられたとおもいます。